捕鯨問題Q&A

捕鯨を巡る国際世論

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ICJ判決が出たにもかかわらず、日本はなぜ調査捕鯨を続けたのですか?

2010年5月、オーストラリアは日本が行っている第二期南極海鯨類捕獲調査(JARPA2)が国際捕鯨取締条約に違反しているとして、国際司法裁判所(ICJ)に提訴しました。2014年3月、ICJは以下を要点とする判決を出しました。

JARPA2は、調査の計画及び実施が調査目的を達成するために合理的なものと立証されておらず、 国際捕鯨取締条約第8条1に規定する科学目的の調査とは言えない。

日本は、将来、第8条1に基づく許可証の発給の可能性を検討する際は、この判決に含まれている理由付けと結論を考慮することが期待される。

一方で、判決は日本側の主張を踏まえた上で以下の点を指摘しました。

  • 国際捕鯨取締条約の目的の一つが鯨類資源の持続可能な利用であること
  • JARPA2の活動は概ね科学調査と特徴付けることができること
  • JAPRA2が求めるいくつかのデータの収集は非致死的手法では実行不可能であり、致死的調査の使用はJARPA2の目的との関係で不合理ではないこと
  • 鯨類捕獲調査の副産物である鯨肉の販売及びその収得金の活用を伴う調査は、その点のみをもって違法とはならないこと

以上の判決を踏まえ、農林水産大臣は、平成26年4月18日付けの談話の中で、「国際法及び科学的根拠に基づき、鯨類資源管理に不可欠な科学的情報を収集するための鯨類捕獲調査を実施し、商業捕鯨の再開を目指すという基本方針を堅持」することを示しました。

この基本方針の下、引き続き日本は調査捕鯨を実施しました。

世界の人々は捕鯨をどう思っているのですか?

世界の中で捕鯨を行っている国は多く、日本のほか、アイスランド、ノルウェー、ロシア、アメリカ、デンマーク、カナダ、インドネシア、セントビンセントなどがあります。

また、IWC加盟国88カ国のうち、40カ国は鯨類の持続可能な利用を支持する国です。

従って、世界中の国々がそろって捕鯨に反対しているかのような理解は間違いです。

さらに、かつてアメリカのリサーチ会社が、アメリカ、イギリス、フランス、オーストラリアでそれぞれ捕鯨に関する世論調査を行ったところ、資源状態が健全であり、適正な捕獲枠の下で行われることなどの一定の条件の下であれば、4カ国とも捕鯨に賛成するとの回答が過半数を超える結果となりました。また、最近、築地の外国人観光客を対象に「日本を観光中に鯨料理を食べてみたいですか」とのアンケートを行ったところ、国籍を問わず半数の外国人は「食べてみたい」と回答していました。世界中で捕鯨が反対されているとの考えは誤りで、むしろ大半が無関心であり、正しい情報の下では捕鯨に対する理解がしっかりと得られるものだと思います。

反捕鯨団体などは、なぜ捕鯨に反対するのですか?

反捕鯨団体などは、その時々に応じ、いろいろな理屈をこねて捕鯨に反対します。鯨は賢く、神聖な動物であるから食べてはならない、水族館で飼育してはならないなど、とても一方的で感情的な主張が多く、反対のための反対であると言わざるを得ません。反捕鯨団体などの本当の目的は何であろうと考えさせられます。

反捕鯨団体が捕鯨に反対する時に述べることは、例えば、①捕鯨を再開すると、すぐにまたクジラが絶滅の危機に瀕するから、②クジラを食べなければならない理由はないから、③クジラの捕獲方法が残酷だから、というものです。どれも捕鯨に反対するための口実としか思えない理由ばかりです。それぞれの反対理由について、もう少し詳しく見てみましょう。

  1. 捕鯨を再開すると、すぐにまたクジラが絶滅の危機に瀕するから

    かつての商業捕鯨がクジラの乱獲を招き、一部の大型クジラを絶滅の危機に追い込んだ歴史があることは事実です。当時は、欧米の国々を中心に鯨油生産を目的とする捕鯨産業が盛んでしたし、資源管理体制も十分に確立されていませんでした。現在は、食料生産を目的とする捕鯨しか行われておらず、以前に比べ厳格な資源管理体制の下で行われることから、クジラを再び絶滅の危機に追いやることは考えられません。

  2. クジラを食べなければならない理由はないから

    「日本は裕福な国であり、他に食べ物はいくらでもあるのだからクジラまで食べる必要はない。そもそもクジラを食べたいと思っている日本人はそんなに多くない」随分と傲慢な言い分ではないでしょうか。そもそもクジラを食べる機会が減ったのは、商業捕鯨モラトリアムによって鯨肉の流通量が大幅に減ったからです。日本人がクジラを食べなくなったのではなく、食べられなくなったのです。

     日本という国は、南北に長く山脈の多い地形で、多種多様な食文化があります。食は量さえ足りれば何を食べても変わらないというものではなく、それぞれの生活環境、自然、そして歴史に基づいて発展していき、食文化として続いてきました。クジラを獲り食べることは、そのような食習慣を有する地域の人々にとってかけがえのない文化なのです。

  3. クジラの捕殺方法が残酷だから

    人道的な配慮から、クジラの即死率を高め、致死時間を短くするための努力は常に払われています。かつて電気銛の使用が残酷だとして、これを廃止したこともありました。

    現在の調査捕鯨では、捕獲されたクジラのほとんどは爆発銛によって、即座に捕殺されています。そうでない場合は二次的捕殺方法(二番銛や大口径ライフル銃)によって捕殺時間が可能な限り短縮されるようにしています。この2つの方法はもっとも効率よく人道的な捕殺を行うことができるように導入されたもので、IWCは爆発銛がクジラの捕殺にもっとも有効な手段であるとし、捕鯨の人道性がこれにより格別に進歩を遂げたとしています。鯨の捕殺は即死か致死時間2分以下であり、これは他の野生生物の捕殺時間と比較してもずっと優れています。

    他の狩猟行為と比べ、捕鯨が特別残酷だとは思いませんので、やはりこの理由の根底には、「クジラは神聖な生き物」という偏見があるのではないでしょうか。

国際捕鯨委員会(IWC)について

IWCとは何ですか?

国際捕鯨委員会(International Whaling Commission:IWC)は、「鯨類の適当な保存を図って捕鯨産業の秩序ある発展を可能にする」ことを目的に、1946年に締結された国際捕鯨取締条約に基づいて、1948年に設立された国際機関です。世界の主要捕鯨国(15カ国)によって発足し、日本は1951年に加盟しています。

2012年までは毎年1回年次会合が開催されていましたが、その後本委員会は隔年開催となりました。下部機関の科学委員会は毎年開催されています。

IWCでは、 「商業捕鯨モラトリアム」や「サンクチュアリー」といった提案に代表される条約の附属書修正には、全投票数の4分の3の賛成票が必要となります。附属書が修正された場合、それは全加盟国を拘束するものですが、定められた手続きにより、IWCに「異議申し立て」を行えば、拘束されることはありません。ノルウェーやアイスランドが現在でも商業捕鯨を続けているのは、商業捕鯨モラトリアムに「異議申し立て」を行っているためです。一方、全投票数の過半数の賛成票で採択される「決議」には拘束力はありません。

日本以外にもIWCから脱退した国はありますか?

IWCから脱退する国は過去にも多くありました。

2018年12月25日、日本政府は国際捕鯨取締条約からの脱退と2019年7月からの商業捕鯨再開を閣議決定し、翌26日に菅官房長官が談話を発表、当日中に条約寄託国の米国国務省へ正式に脱退を通告しました。これにより2019年6月末をもって日本のIWC脱退の効力が生ずることになります。

鯨類の適当な保存及び捕鯨産業の秩序ある発展を目的とするIWCの長い歴史で、加盟国が脱退するのは例外ではありません。一部の強固な反捕鯨国もかつての捕鯨国としての利益を守るために脱退・再加盟を繰り返す例もありました。

寄託国としての役割と任務を遂行する形で米国政府が国務省のホームページにおいて国際捕鯨取締条約およびその議定書の現状を管理し、こちらhttps://www.state.gov/fisheries-status-lists/で公開しています。

以下のとおり、和訳したものをご紹介します。

●2018年8月10日付国務省更新版

国際捕鯨取締条約の現状

https://www.state.gov/international-convention-for-the-regulation-of-whaling

和訳(2019年5月28日参照)

国際捕鯨取締条約議定書の現状

https://www.state.gov/protocol-to-the-international-convention-for-the-regulation-of-whaling

和訳(2019年5月28日参照)

●最新のものに比べ、省略されていない内容も含まれる2018年5月22日付国務省更新版

国際捕鯨取締条約の現状

https://2009-2017.state.gov/documents/organization/191051.pdf

和訳(2019年1月11日参照)

国際捕鯨取締条約議定書の現状

https://2009-2017.state.gov/documents/organization/191052.pdf

和訳(2019年1月11日参照)

どのような国が加盟していますか?

2019年7月現在、88カ国が加盟しています。かつては捕鯨再開を強く主張する国は日本、ノルウェーなど少数でしたが、最近では鯨類資源の持続的利用を支持する加盟国が増え、捕鯨支持国と反捕鯨国の勢力関係が拮抗しています。

捕鯨支持国(40カ国) 反捕鯨国(48カ国)
アジア
中近東
捕鯨支持国 カンボジア、モンゴル、中国、韓国、ラオス(計5) 反捕鯨国インド、イスラエル、オマーン(計3)
アフリカ 捕鯨支持国カメルーン、ガンビア、ギニア、コートジボワール、セネガル、トーゴ、ベナン、マリ、モーリタニア、モロッコ、ギニアビサウ、コンゴ共和国、タンザニア、エリトリア、ガーナ、ケニア、サントメ・プリンシペ、リベリア(計18) 反捕鯨国南アフリカ、ガボン(計2)
欧州 捕鯨支持国アイスランド、ノルウエー、ロシア、デンマーク(計4) 反捕鯨国アイルランド、イタリア、英国、オランダ、オーストリア、サンマリノ、スイス、スウェーデン、スペイン、スロバキア、チェコ、ドイツ、ハンガリー、フィンランド、フランス、ベルギー、ポルトガル、モナコ、ルクセンブルグ、クロアチア、スロベニア、キプロス、ルーマニア、リトアニア、エストニア、ポーランド、ブルガリア(計27)
大洋州 捕鯨支持国パラオ、ナウル、マーシャル、ツバル、キリバス、ソロモン(計6) 反捕鯨国豪州、ニュージーランド(計2)
北米
中南米
捕鯨支持国アンティグア・バブーダ、グレナダ、スリナム、セントクリストファーアンドネービス、セントルシア、ドミニカ連邦、セントビンセント・グレナディーンズ(計7) 反捕鯨国米国、アルゼンチン、チリ、パナマ、ブラジル、メキシコ、ベリーズ、ペルー、コスタリカ、エクアドル、ニカラグア、ウルグアイ、ドミニカ共和国、コロンビア(計14)

(注1)政権交代後、最近は反捕鯨国からの影響を強く受けています

どのようなクジラを管理していますか?

IWCが管理対象としているのは、全世界で約80種いる鯨類の中で、シロナガスクジラ、ミンククジラなどの大型鯨類計13種。それ以外の鯨類はIWCの管理対象となっておらず、国、地域ごとに管理されています。

和名
ヒゲクジラ ヒゲクジラナガスクジラ科 シロナガスクジラ、ナガスクジラ、イワシクジラ、ニタリクジラ、ミンククジラ、ザトウクジラ
ヒゲクジラコククジラ科 コククジラ
ヒゲクジラセミクジラ科 ホッキョククジラ、セミクジラ
ヒゲクジラコセミクジラ科 コセミクジラ
ハクジラ ハクジラマッコウクジラ科 マッコウクジラ
アカボウクジラ科 ハクジラミナミトックリクジラ、キタトックリクジラ
IWC内で、いつごろから対立が始まったのですか?

1972年を境にIWCの様相が変わってきました。IWCの設立から現在までの具体的な流れは次の通りです。

1948~1960年 IWC設立。活動当初は捕鯨国主体の資源管理の初期段階。科学データも少なく、南極海以外での捕獲枠もまだ決められていませんでした。
1960~72年 1960年代からは国別捕獲枠や鯨種ごとの捕獲禁止措置を実施し、資源管理を強化。その結果、アメリカ、イギリス、オランダ、オーストラリアなどの主要捕鯨国が、採算の合わなくなった捕鯨産業より撤退。かわって動物愛護、自然保護思想などの動きも高まり、反捕鯨運動が活発化します。1972年に開催された国連人間環境会議では、商業捕鯨の10年間のモラトリアム(一時停止)が採択されますが、IWCでは科学的に正当性がないとして否決しています。
1972~82年 1972年を境に、反捕鯨派と捕鯨派の対立が激化。反捕鯨派が多数派工作を展開した結果、1982年までの間に25カ国がIWCに新規加盟。反捕鯨国が75%以上の多数を占めるようになり、1982年に商業捕鯨のモラトリアムが可決されました。
1982年~ 1982年のモラトリアムによって、1986年から大型鯨の商業捕鯨は一時停止となりました。しかし、モラトリアムの付帯条件には、1990年までに新たな捕獲枠を設定することを明記しています。一方、IWC科学委員会は1990年、南極海のミンク鯨の資源量として76万頭の推定値に合意し、1992年には安全な捕獲枠を算出する改定管理方式(RMP)を完成。こうした事実に反し、、その後もモラトリアムは取り下げられることなく、1994年には南極海サンクチュアリー(鯨類保護区)が設定されるなど捕鯨論争が続いています。そんな中、モラトリアムに異議申し立てを行っているノルウェー(1993年~)とアイスランド(2006年~)がそれぞれ商業捕鯨を再開しました。日本は捕鯨再開を目指し、1987年から調査捕鯨を実施し、資源管理に必要な科学的データを収集しています。

鯨の資源について

鯨は何種類いるのでしょうか?

現在確認されているクジラは84種類です。大きく分けるとヒゲクジラ類(14種)と、ハクジラ類(70種)のふたつに分類されます。

ヒゲクジラ類は、上あごの両側にクシの歯のように200~300枚ものひげ板をもつ仲間で、鼻の穴が2つあり、あごの下に長いスジ(ウネ)がある種類もいます。

ハクジラ類は、あごに鋭い歯をもつ仲間で、鼻の穴はひとつです。ハクジラ類のうち、4メートルより小さいものはイルカと呼ばれています。

クジラは絶滅に瀕しているのでは。世界中にどのくらい生息しているのでしょう?

クジラの資源量はそれぞれの種類によって異なります。生息環境の悪化で個体数が減少しているカワイルカなど、少数の種類を除けば、本当に絶滅に瀕しているクジラはいません。かつて資源管理が行われないまま乱獲の対象となった大型のシロナガスクジラ、セミクジラなどの資源量は極めて低い水準にまで落ち込みましたが、現在では完全に保護されており、絶滅の危機にはありません。また、ミンククジラやニタリクジラ、マッコウクジラのように、資源状態のよいクジラもいます。国際捕鯨委員会(IWC)科学委員会が推定する鯨の資源量は次のとおりです。

鯨種 対象海域 推定年度 推定資源量(頭数)
ミンククジラ  南半球ミンククジラ 推定年度1992/93-2003/04 推定資源量(頭数)515,000
北大西洋(北東部)ミンククジラ 推定年度2008-13 推定資源量(頭数)90,000
北大西洋(中部)ミンククジラ 推定年度2005-07 推定資源量(頭数)50,000
北大西洋(西グリーンランド)ミンククジラ 推定年度2015 推定資源量(頭数)5,100
北太平洋(北西太平洋及びオホーツク海 )ミンククジラ 推定年度2003 推定資源量(頭数)20,000
北太平洋(日本海) 2004-06  4,200 
シロナガスクジラ  南半球(ピグミーシロナガスクジラを除く)シロナガスクジラ 推定年度1991/2-2003/4 推定資源量(頭数)2,300
北太平洋 (東部) 2008  2,500 
ナガスクジラ 北大西洋(東グリーンランド~フェロー諸島)ナガスクジラ 推定年度2015 40,800
北大西洋(西グリーンランド)ナガスクジラ 推定年度2015 推定資源量(頭数)2,200
コククジラ 北太平洋(東部)コククジラ 推定年度2015/16 推定資源量(頭数)27,000
北太平洋(沿岸摂餌群)  2017  230 
北太平洋(西部)コククジラ 推定年度2015 推定資源量(頭数)200
ホッキョククジラ   北太平洋(ベーリング-チュクチ-ボーフォート海)ホッキョククジラ 推定年度2019 推定資源量(頭数)12,500
北太平洋(オホーツク海)  2016  218 
北大西洋(西グリーンランド摂餌場)ホッキョククジラ 推定年度2012 推定資源量(頭数)1,300
北大西洋(カナダ東部-グリーンランド西部)  2013  6,400 
北大西洋(スヴァールバル諸島)  2015  340 
ザトウクジラ  南半球(南極海摂餌場を一部含む)ザトウクジラ 推定年度1991/2-2003/4 推定資源量(頭数)42,000
南半球(南米東部:ブラジル)  2005  6,300 
南半球(南米西部:エクアドル)  2006  6,500 
南半球(アフリカ西部:ガボン)  2005  6,800 
南半球(西南アフリカ)  2001  300 
南半球(アフリカ東部:モザンビーク)  2003  6,000 
南半球(アフリカ東部:マダガスカル)   2004  7,400 
南半球(西オーストラリア)  2010  14,500 
南半球(オセアニア) 2005  4,300 
北大西洋(北西部)  1993  11,600 
北大西洋(アイスランド/フェロー諸島)  2015  10,000 
北大西洋(東グリーンランド)  2015  4,200 
北大西洋(西グリーンランド)  2015  1,000 
北太平洋ザトウクジラ 推定年度2004-5 推定資源量(頭数)21,000
アラビア海  2007  80 
セミクジラ      南半球合計セミクジラ 推定年度2009 推定資源量(頭数)12,000
南半球(南西大西洋)  2009  3,300 
南半球(アフリカ南部)  2009  3,900 
南半球(亜南極ニュージーランド)  2009  2,700 
南半球(中南部及び西部オーストラリア)  2009  2,000 
北大西洋  2010  490 
イワシクジラ  北太平洋(中東部)  2010-2012  29,600 
ニタリクジラ 北太平洋(西部)ニタリクジラ 推定年度2008-2015 4定資源量(頭数)41,000
ゴンドウクジラゴンドウクジラ 中部及び北東大西洋 推定年度1989 推定資源量(頭数)780,000
ベルーガ  北太平洋(チュクチ海東部)  2017  13,300 
ネズミイルカ  北大西洋(東部バルト海、ベルト海及びカテガット海峡)  2012  40,000 
セッパリイルカ  ニュージーランド南島  2016  14,800 
マウイイルカ  ニュージーランド北島  2016  57 
(IWCホームページhttps://iwc.int/estimateより)

鯨肉について

これからも鯨を食べることが出来ますが?

日本は商業捕鯨の再開を目指し、調査捕鯨を継続してきました。先のICJ判決は「鯨類捕獲調査の副産物である鯨肉の販売及びその収得金の活用を伴う調査は、その点のみをもって違法とはならない」と判じましたので、調査捕鯨で捕獲した鯨は食料として加工され、これまでどおり市場に供給されていきます。同時に、2019年7月に再開された商業捕鯨による鯨製品の流通も始まっています。また、最近ではアイスランドやノルウェーからも鯨肉が輸入されています。その他、国内には沿岸小型捕鯨による鯨肉や、定置網に混獲された鯨の肉も流通しており、今後も年間数千トン程度の供給が見込まれています。

クジラを食べてもいいのですか?
もちろん食べて大丈夫です。現在、国内では商業捕鯨による鯨肉、鯨類捕獲調査の副産物、IWC規制対象外のクジラやイルカのお肉、アイスランドやノルウェーからの輸入鯨肉、定置網などで混獲されたクジラのお肉などが食用として流通しており、すべて合法的な食品です。その上、調査副産物、輸入鯨肉、混獲クジラは個体ごとにDNA登録されており、トレーサビリティが確立されています。 DNA分析を活用した鯨肉市場実態調査の実施について
鯨肉は栄養的にどのような特徴があるのでしょうか?

鯨肉は美味しいのはもちろんのこと、ビタミンAが豊富で低カロリー、低コレステロールのヘルシーな食品として注目されています。牛肉や豚肉、鶏肉と比べタンパク質が多く、脂肪分のほとんどが良質の多価不飽和脂肪酸のため、成人病の予防にもよい食品です。さらに、他の食肉と比べてアレルギー症状をおこすことが少なく、食物アレルギーに悩む人にとっては重要なタンパク源となります。

さらに、鯨肉にはクジラ特有のアミノ酸物質の「バレニン」が豊富に含まれています。検証実験の結果、「バレニン」には抗疲労効果や疲労回復効果が確認されており、最近ではこの「バレニン」を使用したサプリメントや栄養剤がいくつも開発されています。

クジラは捨てるところなく利用できると聞きましたが、本当ですか。

本当です。日本人は、クジラを油や肉だけではなく、骨やヒゲ板まですべて捨てることなく利用してきました。1832年には鯨の約70もの部位について調理法を記した「鯨肉調味方」が出版されています。日本人にとってクジラは海の幸。貴重なタンパク源として縄文時代から利用されてきました。皮、五臓六腑まで食べ物として利用する日本のクジラ料理は世界にも類を見ない素晴らしい食文化です。

海洋汚染によって鯨に汚染物質が蓄積されていると言われることもありますが、日本が生産している鯨肉は食べても大丈夫ですか?

わが国で流通している鯨肉は、汚染物質や放射性物質の濃度について海域ごとに検査を行い、厚生労働省の定めた暫定的基準値を下回っていることを確認しておりますので、安心してお召し上がりください。また、これまでの鯨類捕獲調査によって、鯨の脂皮や筋肉中に蓄積されたPCBやDDTといった人口有機塩素化合物や水銀はごく微量であることも分かっております。調査で得られた汚染物質に関する調査結果の詳細は、日本鯨類研究所のホームページで公開しています。https://www.icrwhale.org/03-A-b-06-1.html

日本の捕鯨の文化と伝統

クジラと日本人の歴史は古いのですか?

石川県の真脇遺跡からは約5,000年前(縄文時代前期~中期)のイルカの骨が大量に出土、九州でも約4,000年前(縄文時代中期~後期)の遺跡からクジラの椎骨を製造台にして作られた土器(底面に椎端の圧痕を残しているので「鯨底土器」と呼ばれている)が多く発見され、また長崎県壱岐の原の辻遺跡から出土した約2,000年前(弥生時代中期後半)の甕棺に捕鯨図が描かれており、712年成立の『古事記』にもクジラが登場しています。このように大昔からクジラと日本人との付き合いがありました。

先史時代から現在に至るまで、日本人はクジラとともに生きてきました。日本の長い歴史の中で、捕鯨を通じて信仰が生まれ、また唄や踊り、伝統工芸など多くの捕鯨文化が実を結び、伝承されてきています。これこそ、日本人がクジラとともに歩んできた歴史の証ではないでしょうか。今、日本が誇るこの捕鯨の伝統と食文化の大切さを再認識する時代にきています。

日本各地に鯨信仰や鯨に関する祭り・芸能があるのはなぜですか?

鯨信仰は、ひとつには大漁祈願が考えられます。日本人にとって鯨は富や食料をもたらすエビス様として沿岸地域に深く密着してきました。また、捕鯨によって恩恵を得る反面、殺生を行うことに対する戒めの意味から、鯨を供養するという仏教信仰、さらには、すべてのものには霊魂が宿っているという霊魂観から、たたりを恐れ、豊漁を願う気持ちがこめられていたのでしょう。そのため、日本人は、鯨の供養塔や墓、過去帳などを作り、法要をおこなってきました。日本各地に鯨に係る祭りや芸能があるのは、日本人と鯨が共に歩んできたという歴史の証だといえます。

日本の捕鯨と鯨食文化はどのように普及してきたのですか?
  • 捕鯨技術の進歩と普及~ 12世紀ごろになると、積極的に船をこぎだし、銛で突く「突き取り式捕鯨」が生まれます。江戸時代に入り、1606年に和歌山の太地で日本最初の捕鯨専業組織「鯨組」が設立され、組織的な捕鯨が始まります。さらに1675年には「網取り式捕鯨」が開発され、この捕鯨方法が土佐、長崎などへ伝播しました。
  • 庶民の食べ物として普及していくクジラ~ 日本では、仏教の伝来とともに、獣の肉を食べることが禁止されていたために、魚の食文化が発展してきました。クジラは魚の仲間と考えられていたため、貴重な動物タンパク源として古来から利用されてきました。クジラが食品として広く普及し始めるのは、江戸時代に入ってからになります。江戸時代には、大量のクジラ肉が流通し、庶民の食べ物として普及していきました。部位ごとに料理方法を記載した鯨料理の専門書も登場し、同時に、各地でクジラの墓や供養碑が建てられて供養が行われるとともに、唄や踊りなど芸能文化が発展していきました。
現代の捕鯨はどのように発展してきたのですか?
日本の近代捕鯨は1899年に、汽船に搭載した砲から綱のついた銛を発射してクジラを捕獲する「ノルウェー式捕鯨」の導入によって始まります。欧米の捕鯨船による日本周辺での乱獲により、日本の捕鯨はいったんは衰退しますが、この新捕鯨法によって沿岸捕鯨が復活し、1934年には南氷洋に進出します。戦後、この南氷洋捕鯨が日本の食糧難を救うことになります。伝統的に鯨をすべて利用してきた日本は、商業捕鯨モラトリアムで中止になるまで捕鯨を続け、その後も調査捕鯨を実施しながら捕鯨の再開を目指し、2019年から捕鯨を再び再開しています。
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