座礁・混獲した鯨類への対処法 
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4 座礁・混獲した鯨類への対処法

4−2.海岸に座礁している場合

 以下の手順によって救出作業にかかる。

各都道府県または市町村の水産担当部署に連絡するとともに,付録1にあげた 座礁鯨類に関する問い合わせ先が近隣にある場合には,まず座礁鯨類に関する 情報を伝えて,その指示にしたがう。場合によって専門家が派遣されてくることがある。

専門家が来ないときは,動物の前方から注意深く近づき,動物の状態をより詳 細に観察する。但し,この段階では,とくに大型の鯨類では,尾びれに近づか ないこと。動物が突然動き出すかもしれず危険である。呼吸音が聞こえるかどうかを改めて確かめる。これは種によっては10分以上を要する。同時に目も観察する(目自体には触れないこと)。また,これらの観察の際,動物が波に洗われるなどして人間の方へ転がって来ないように注意すること。

瀕死と判断されない場合は,すぐに他に協力を求め,沖へ戻すための作業に入 る。救援を求めるため,動物のそばを離れなければならないときは,動物が楽 な状態でいられるよう,呼吸孔(通常,頭のてっぺんにある)が水や砂で塞がらないように体に支えを施したり,皮膚を傷つけないよう,まわりの石などを取り除く。何か湿って冷んやりしたもの(濡れたタオル・毛布や海藻)を探し,とりあえず動物に被せておくのもよい。また,呼吸孔や目に異物が入らないよう注意する。

協力者の到着を待つ間,動物の体を冷やし,落ち着かせ,楽な状態にさせてお く。鯨類は水中生活に適応しており,陸に上がると,たとえ外気が冷たくても 体温は急激に上昇する。鯨類は,胸びれ,背びれ,尾びれから熱を発して身体を冷却するので,これらの部位は体温を低く保つためにとくに重要である。胸びれをできるだけ自由に動かせるようにしておくのもよい。たとえば,胸びれの下の砂を掘り出し,その穴に水を入れて,そこに胸びれを浸しておくと体の冷却にも役立つ。また,皮膚が敏感で,空気中ではすぐに乾燥し始めるので,体の表面を湿らせておく必要がある。なお,突き傷は動物に致命傷を与えることになるので,手鈎の使用は慎むこと。

生きて打ち上がったイルカへの応急処置

十分な人手が集まり,動物を持ち上げられそうなとき,また,人間が動物を支 えて海に入っていっても危険ではないと思われるときに,はじめて動物を海へ 戻すことを考える。

どのような動物でも,海へ戻す前に,座礁して死亡した動物と同じように写真 撮影等の記録をとる。海上や陸上で同じ個体を識別できるような特徴を記録し ておくとさらによい。

動物を運ぶ際,胸びれは傷つきやすいので,決して押したり引いたりしないこ と。動物を持ち上げて布や網に乗せるか,あるいは体の下に注意深く布や網を 敷く。そして,水深が十分にある場所まで運ぶ。体を水平にして泳げることを確認したら,布や網をはずす。動物は陸に打ち上げられ,体が硬直しているので,水中ではしばらく支えが必要である。静かにゆすってやると動くようになることがある。決してひれや尾をつかんだりせず,体の両脇や背びれのつけ根を押してやる。

中〜大型鯨の場合,人間の力だけでは,鯨体の移動が困難なときは,潮が満ち るのを待って,船で沖へ戻す。この場合,注意深く,尾柄部に幅広のロープを かけ,船でゆっくり曳航し,十分な水深のところで,鯨体を放す。

生きているイルカの救出方法

どうしても陸へ戻りたがり,あらゆる手を尽くしてもうまく泳げそうにないと きは,海へ押し戻そうとしても無駄である。岸へ上げ,できるだけ楽な状態に してやる。

10群れで座礁した場合は,ふつう,その中の大多数はまだ元気なので,海にうま く戻すことができる場合がある。しかし,群れの社会的きずなが非常に強いの で,仲間が岸にいるときに,群れの中の1-2頭だけを海へ戻すことは非常に困難である。

 集団での座礁を処理する場合の最もよい方法は以下のとおりである。

・まだ海の中にいる動物をそれ以上岸へ近づけないようにする。船や人間 を使って,群れを水深の浅い安全な場所に静かに集めておく。
・岸に乗り上げた動物を他の個体とともに海へ戻す。
・群れ全体がまとまって沖へ戻るよう誘導する。
・大きな群れにはいくつかの小グループが含まれていることがよくあり, これらは社会的きずなが強いので,小グループを識別できれば,けがを した個体が最も少なく,扱いやすいグループから順番に沖へ戻すことができる。群れのリーダー(体の最も大きな個体)を見つけ,少し海へ押し出してやると残りの群れがあとについていくことがある。リーダー格の個体が岸に戻らないよう,慎重に船で誘導する必要がある。
・集団座礁した鯨類の救出には多くの困難がつきまとうが,記録は必ずと り,すくなくとも,鯨種,頭数は記録しておく。また,座礁に至る過程 もできるだけわかりやすく記述する。この情報は後に集団座礁に関する貴重な資料となる。

11けがをしているなど,動物の健康状態が不良かつ適当な飼育・収容施設が近隣 にある場合には,そこへ一旦動物を移動させて保護・治療を行う。それにとも なう輸送までの時間は,上記の対応をする。収容施設がなく,専門家もこない場合は,動物を放置等するしかない。

12
6.報告」にしたがって,関係機関に処理について報告をする。